「歌がうまくなりたいならこれを聴け!」というタイトルで私の独断と偏見で尊敬してやまないアーティストを紹介する予定だったが変更する。先日、アウェンダラプのリリースツアーがひと段落した熱量のまま、ライブで自分の最高のパフォーマンスをするために、お客さんを魅了するためにどうしたらよいかという視点で話をすすめることにしようと思う。私は何個か大事にしていることがあって、それらをしっかり準備すればパフォーマンスのクオリティは一定以上保てる自信がやっとついてきた。もちろん良い時も悪い時もあるが、エントランス料と同等、もしくはそれ以上の価値があると思ってもらえるように準備する。それがプロのはずだ。誰しも自分の内面、世界観を表現するために演じている。だからといって、観客を無視した内容であってはいけない。それなら一人、もしくは仲間とスタジオで演奏していればいいだけだ。ライブの目的は人それぞれだが、私は同じ空間に居る人たちとエネルギーの交換をして、お互いの世界を知り、何か魂が揺さぶられたり自分だけでは気づけなかった意識や感情を呼び起こす、純粋に感動する、ライブの後は新しい自分に生まれ変わったような気持ちになれる、そういった体験をするために歌っている。
で、具体的にどんなことに気をつければそのようなパフォーマンスになるのか。これもちょっとしたテクニックで格段にレベルアップするのでご参考までに。
一つ目はマイク。
どんなマイクを使えばいいか。
私はなんでも良いと思うのだが、今、クラブや小さな箱でよく使われているのはSHURE SM58、BETA58というもの。このマイクは衝撃にも強く、どんな声の人にも対応できる。音を拾う範囲も広く、必要以上の低音と中音域のカット機能もついている。とても優秀なマイクだ。私は大抵、SHURE BETA57Aを持参し、会場のマイクとどちらか良い方を選択している。57は楽器用のマイクなのだが、ハウリングを抑えられ、高いゲイン、広い周波数レンジがあるため気に入っている。しかし、ポップ(破裂音)をしっかり拾ってしまうのと、音を拾う範囲が狭いので歌のテクニックがないと扱うのは難しい。あとはあまり出番はないがAKGのマイク。これは中音域をきれいに拾ってくれるので音数の少ないアコースティックの場面で使うことが多い。60年代のジャズっぽい声に聴こえるのでなかなか素敵。それぞれのマイクの特性を知ってライブ会場の構造やライブの内容などを考慮して自分に合うもの選択することが大切である。
マイクの持ちかたもすごく重要。
これも、マイクの特性を知っていれば自ずと持ち方もわかるはず。
音を拾う範囲を手で邪魔しないように持つこと、角度は床と平行に持つこと、口とマイクの距離は離しすぎないことが大切。また、スピーカーと自分の立ち位置にも気をつける。スピーカーの音を拾える場所に居るとハウリングしやすいので、立ち位置を変えるかスピーカーの角度を変えてもらうかする。
二つ目はリハーサルでの準備。
リハーサルは何のためにやるのか?音の大きさの調整、それぞれの楽器とのバランスをみる、自分の声を決める。私はこれに、その日関わる全ての方達への自己紹介、決意表明という意味も加えたい。リハでは他の共演者、スタッフが同じ空間にいることが多い。だいたいリハでそのアーティストの実力を見極める。なので私はリハで手は抜かない。どれだけこのライブに命をかけているのか、どれだけ真剣なのかが伝わるとそれに呼応してスタッフのみなさんは手をかけてくれるようになる。他の共演者も気合が入る。結果、本番は良いグルーヴが生まれ、お客さんは質の高いライブを体験できる。
クラブやバー、レストランなどで演奏する場合、専属のPAさんが居ない。他の業務と兼務して機材を管理していただいているだけのこと。本番は卓につきっきりということはほとんどない。なので、音を決めるときは演奏する側がやっていかなければならない。私はまず、自分のマイクの出音はまっさらにする。なんのエフェクトもかけない。生々しさが残り、歌の上手下手もすぐわかる状態だがこれが一番しっくりくるし、PAさんが居ない場合はマイクと自分の距離でコントロールできるので良い。そういった場面では大抵モニタリングもできない状態なので、モニターは聞こえないものとして諦める。外音のバランス、声がしっかり届いていればオッケー。ライブハウスや大きな会場で専属のPAさんが居る場合はお任せするに限る。勿論、出音の好みをお伝えして自分のイメージ通りの声にしてもらう努力はする。中にはお金をもらっているにもかかわらず、相応の仕事をしないPAさんもいるので注意は必要。私はプロじゃない人には容赦ないので、はっきり言うか態度に出してしまうのがまだ幼稚。反省。笑 ライブの曲順、MCの場所、どんなイメージの曲なのか、声量の少ない曲なのか、声を張る曲なのか、照明さんが居る場合はどんな照明にしてほしいのか、シートを作っておくとお互いにスムーズにやりとりができるので是非準備を。PAさんによっては、前準備として音源とそのシートを希望される方もいる。とにかく、リハは会場で良い音環境で歌えるよう整えるという目的が達成できればいいので、全曲フルでリハーサルする必要はなく、気になることろや皆で共有しておきたい注意するところを確認してリハは終了する。あ、もちろん、リハする前に声を立ちあげておく事も忘れずに。限られた時間で効率よくリハするには体も万全な体制にしておく。体のストレッチ、発声練習は30分前から開始し、済ませておくこと!
たった二つのことを書くだけでかなり疲れたので今日はここまで!